住宅ローンを利用して、住宅の購入や新築などをした場合で一定の要件を満たすときは、所得税や住民税について、住宅ローン控除の適用を受けることができます。また、住宅ローンを利用しない場合でも、認定長期優良住宅・認定低炭素住宅については、所得税の特別控除を受けることができます。ここでは、こうした控除について紹介しています。
住宅ローン等を利用して住宅の購入や新築または増改築等をした場合で、一定の要件に当てはまるときは、住宅ローン借入金等の年末残高の合計額を基として計算した金額を所得税額から控除することができます。
主な要件は次の通りです。
- 1.取得後6ヶ月以内に居住し、控除を受ける年の年末に引き続き住んでいること
- 2.控除を受ける年の合計所得が3,000万円以下であること
- 3.登記事項証明書の家屋の専有面積が50u以上で床面積の2分の1以上が自己居住用であること
(増改築の場合は増改築後の面積が50u以上であること) - 4.10年以上にわたって分割返済する借入金があること
(親族などからの個人的な借入や0.2%に満たない利率による勤務先からの借入金は除く) - 5.居住した年及びその前後2年間(通算5年間)居住用の財産の3,000万円の特別控除等の特例(売る「2-1 居住用財産の3,000万円特別控除」)を受けていないこと
- 6.既存(中古)住宅の場合、次のいずれにも該当する住宅であること控除を受ける年の合計所得が3,000万円以下であること
(1)建築後使用されたものであること
(2)次のいずれかに該当する住宅であること
(ア)取得する建物が耐火建築物の場合は築後25年以内であること
(イ)木造など非耐火建築物の場合は築後20年以内であること
(ウ)新耐震基準に適合する建物であること(この要件による特例の適用は平成17年4月1日から、申告時に耐震基準適合証明書を添付)ただし、既存住宅売買瑕疵保険に加入後2年以内の一定の住宅であることが証明された場合を含む
(エ)平成26年4月1日以降、耐震基準に適合しない既存(中古)住宅(要耐震改修住宅)を取得した場合で、その住宅を取得する日までに耐震改修工事の申請等をして居住する日までに耐震改修工事を完了し、耐震基準に適合することが証明されたこと等の一定の要件を満たす建物であること(なお、この耐震改修につき「既存住宅を耐震改修した場合の税額控除」(リフォームする(増改築・改修)2-2参照)を適用する場合には、住宅ローン控除は適用できない。)
(3)親族や事実婚の相手など生計を一にする人などから取得した住宅・贈与による住宅でないこと
※なお、平成28年4月1日以降、住宅の購入や新築などをする一定の非居住者にも適用が可能となりました。
平成26年4月1日以降、住宅等の取得の対価に含まれる消費税等の税率が8%または10%の場合については、控除対象となる借入金の上限は、住宅の種類により、次のようになります。
居住年 | 控除期間 | 対象ローン限度額 | 控除率 | 合計最高控除額 |
---|---|---|---|---|
平成26年 4月〜平成33年12月 | 10年間 | 4,000万円 | 1.0% | 400万円 |
居住年 | 控除期間 | 対象ローン限度額 | 控除率 | 合計最高控除額 |
---|---|---|---|---|
平成26年 4月〜平成33年12月 | 10年間 | 5,000万円 | 1.0% | 500万円 |
ただし、平成26年4月以降の物件の引き渡しでも消費税が非課税となる個人の売り主から購入した既存(中古)住宅の場合は、対象となるローン限度額が2,000万円、合計最高控除額が200万円となります。
※1認定長期優良住宅とは、住宅の構造及び設備が、次に掲げる措置が講じられたもので、一定の認定基準を満たしたものをいいます。
1.当該住宅を長期にわたり良好な状態で使用するために、次に掲げる事項に関し、国土交通省令で定める基準に適合させるための措置
(1)住宅の構造耐力上主要な一定の部分、住宅の雨水の浸入を防止する部分の構造の腐食、腐朽及び摩損の防止
(2)住宅の構造耐力上主要な一定の部分の地震に対する安全性の確保
2.居住者の加齢による身体の機能の低下、居住者の世帯構成の異動その他の事由による住宅の利用の状況の変化に対応した構造及び設備の変更を容易にするための措置として国土交通省令で定めるもの
3.維持保全を容易にするための措置として国土交通省令で定めるもの
4.日常生活に身体の機能上の制限を受ける高齢者の利用上の利便性及び安全性、エネルギーの使用の効率性その他住宅の品質または性能に関し国土交通省令で定める基準に適合させるための措置
このほか、住宅の維持保全の期間が30年以上であることなど一定の基準を満たす必要があります。手続きは、住宅を建築し住宅の維持保全等を行う場合に、所管行政庁に長期優良住宅建築等計画の認定を申請して、認定を受けることになります。
※2認定低炭素住宅とは、都市の低炭素化の促進に関する法律の規定に基づく認定を受けた建築物のうち、租税特別措置法に定める一定の新築住宅をいいます。認定集約都市開発事業により整備される特定建築物である住宅を含みます。
認定基準は、一次エネルギー消費量を指標として住宅・建築物の低炭素化を定量的に評価し、断熱材の厚みや複層ガラス、軒ひさしの設置、太陽光発電パネルの設置等により、省エネルギー法に基づく省エネルギー基準を超える性能(一次エネルギー消費量がマイナス10%以上)を求めることを基本としています。 これに加え、節水対策やHEMSの導入などの措置を選択的項目として定めています。なお、省エネルギー基準と同等以上の断熱性能を確保することも要件とします。
なお、平成25年分から平成49年分までの所得税について、住宅ローン控除による税額控除等、所定の計算をした後にその年分の所得税額(外国税額控除の適用を除く)が算出される場合には、算出された所得税額を基に2.1%の復興特別所得税がかかります。
住宅ローン控除を受けるには確定申告が必要です。適用を受ける1年目に確定申告をしたサラリーマンは、2年目からは税務署から送られてくる書面に記入し、金融機関の残高証明書とともに勤務先に提出すれば年末調整で控除できます。
ただし、住民税からの控除を受ける場合には、所得税の確定申告を済ませていれば原則として市町村等への申告が不要となりますが、別途改めて申告することもできます。また、従前の税源移譲に伴う住民税の住宅ローン控除制度も、22年度分以降の手続きについては同様です。
また、住み替えで新たに購入した住宅について住宅ローン控除の適用を受けた後、旧住宅を譲渡する場合などのように、住宅ローン控除の対象となった住宅ではない物件を住宅ローン控除の適用の翌年、翌々年に譲渡した場合、「売る2-1居住用財産の3,000万円特別控除」や「売る2-3特定居住用財産の買換え等の特例」などと、住宅ローン控除の併用はできません。 このためどちらかを選択することになりますので、注意が必要です。
所得税額から控除しきれなかった金額があるときには、翌年の住民税から一定金額を限度として控除することができます。住宅等の対価に含まれる消費税等の税率が8%または10%の場合については、次のようになります。
居住年 | 控除限度額 |
---|---|
平成26年4月〜平成33年12月 | 所得税の課税所得金額等※×7%(最高 13万6,500円) |
※前年の所得税の課税総所得金額、課税退職所得金額、課税山林所得金額の合計額をいいます。
ただし、消費税が非課税となる個人の売り主から購入した既存(中古)住宅の場合は、控除限度額が所得税の課税所得金額等の5%(最高9万7500円)となります。
住宅ローン控除の適用を受けるには、新築、購入、増改築等をした日から6ヶ月以内に居住し、その年の年末まで引き続き居住することが必要とされています。しかし、転勤等のやむを得ない事情による場合は、一定の条件を満たせば適用を受けることができます。
- ・所有者の単身赴任など(海外赴任で非居住者となる場合を除く。ただし平成28年4月1日以降、住宅を取得等する一定の非居住者にも適用が可能になる)で家族が居住している場合などは、適用が可能
- ・住宅ローン控除の適用を受けていたものの転勤等やむを得ない事由で居住できなくなり(平成15年4月1日以降)、再び居住を開始した場合、残存控除期間で再適用が可能
- ・6ヶ月以内に居住したものの転勤等やむを得ない事由でその年の年末に居住できなかった場合(平成21年1月1日以降)、その後に再居住すれば、残存控除期間で適用が可能
- ・最初に居住の用に供した年に転勤等やむを得ない事情でいったん居住できなくなり(平成25年1月1日以降)、その年の12月31日までに再居住した場合も特例の対象とする
なお、消費税等の税率が8%または10%の場合について、住宅ローン控除の拡充措置を講じてもなお効果が限定的な所得層に対しては、「すまい給付金」の給付制度が設けられています。
長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づく認定を受けた長期優良住宅、都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく低炭素住宅(両方を合わせて認定住宅といいます)の新築等を行い、居住した場合に、所得税額から一定の税額控除ができる制度です。
主な適用要件は以下の通りです。
- 1.認定住宅を新築、または建築後使用されたことのない認定住宅を取得
- 2.認定住宅が所得税の特別控除の対象となった日(認定長期優良住宅は平成21年6月4日、認定低炭素住宅は平成26年4月1日)から平成33年12月31日までに居住
- 3.個人の所得要件は、合計所得金額3,000万円以下
通常の住宅に比べて性能を強化するためにかかった費用に相当する額(性能強化費用相当額)の10%を、その年の所得税から控除します。なお、1年で控除額を所得税から控除できなかった場合には、控除しきれなかった残額を翌年の所得税から控除できます。 住宅ローン控除とは選択制となっていますが、居住用財産の買換え等の特例との重複適用は可能となっています。
平成26年4月1日以降、住宅等の対価に含まれる消費税等の税率が8%または10%の場合については、控除対象限度額が次のようになります。
居住年 | 控除対象限度額 | 控除率 | 控除限度額 |
---|---|---|---|
平成26年4月〜平成33年12月 | 650万円 | 10% | 65万円 |